無料で利用可能なGISソフトとして,埼玉大学の谷先生が開発されたMANDARAを,長らく活用させていただいております。MANDARAはエクセルがあれば利用することができ,起動も早く,操作も簡単でわかりやすく,本当に便利なソフトです。
しかし,残念ながらWINDOWSでないと利用できないため,MANDARAを使うためだけに,自宅と研究室にWINDOWS環境を準備していました。
研究費を利用できる我々研究者は,WindowsもMacも両方そろえるといったことが可能です。しかしながら,学生さんはそうはいきません。2018年度のゼミから,ゼミ生にGISを教え始めました。Macユーザーの学生さんへは,Windowsパソコンを貸与しましたが,自宅で使うことができず,不便な思いをさせてしまいました。
MACで無料で利用可能なGISソフトとしてのオススメはQGISです。このページでは,MACでGISソフト(QGIS)を使いたい!という方のために,私の覚え書きをアップしたいと思います。
QGISのマニュアルは,それなりに数多く出版されています。これまではWindowsユーザーが書かれた本が多かったのですが、2021年ぐらいからMacユーザーが書いた本を多く見かけるようになりました。2023年4月現在は、WindowsでもMacでも同じように実行できるようになりました。
このサイトでは、QGISを利用する際に知っておくと便利な情報を掲載したいと思います。
2023年4月16日現在,MacOS Ventura(13.2.1)にQGISのインストールが可能です。URLは下記の通りです。
このサイトから「Download Now」というボタンをクリックします。2023年4月16日現在の最新版はVersion 3.30ですが、安定版として提供されている「Version 3.28」をダウンロードすることをお勧めします。
ダウンロードしたdmgファイルをダブルクリックすると「QGIS-LTR.app」アイコンが現れます。これを「Applications」のアイコン上に移動することでインストールが開始されます。インストールに必要な時間は5分程度です。
初めて起動したとき、「開発元が未確認のため開けません」というメッセージが出る場合があります。
<「開発元が未確認のため開けません」というメッセージが出た場合>
◯OKをクリックしてメッセージを閉じます。
◯システム環境設定→セキュリティとプライバシー→◯◯は開発元を確認できないため,開けませんでした。→「このまま開く」をクリック
◯その後は,メッセージに従うと,インストールが進みます。
QGISを使うとどんなことができるのか、ざっと知りたい!という方には、以下の書籍がオススメです。
中島円『その問題、デジタル地図が解決します−はじめてのGIS』ペレ出版、2021年
この本は、5つのミッションに取り組むことによって、QGISでどのような課題解決ができるのかを具体的に教えてくれます。1つのミッションをコンプリートするために、5日間のレッスンが用意されています。小地域統計を用いて社会地図を描く方法についても解説がありますし、バッファリングやボロノイ図といった解析方法についても具体的に説明がなされています。
卒業研究や修士論文などにGISを活用したいと考えている方には、下記の書籍がオススメです。
河端瑞貴編著『事例で学ぶ経済・政治分析のためのGIS入門−QGIS, R, GeoDa対応』古今書院、2022年
e-Stat国勢調査(小地域)の統計データと境界データの結合から、地域メッシュ統計、ジオコーディング、空間的自己相関、ボロノイ分割の応用といった研究活動に利用できる手法が丁寧に説明されています。
浅川ゼミでは毎年、Fieldworkとして街歩きを行っています。自分が歩いた軌跡を簡単に記録でき、それをQGIS上に簡単に表示することができます。用意するものは、スマホ上で動くロガーだけです。iPhoneの場合、Simple Loggerがお勧めです。下記のリンクから、ダウンロードから設定までの説明を読むことができます。
https://asu-lab.com/gps-app-simplelogger/
このアプリには、写真撮影機能もついているのですが、Simple Loggerの写真機能から撮影した写真はiPhoneでは見ることができますが、QGISに移行できないので、iPhoneの写真機能を使って撮影した方が良いです。そうすれば、QGISに移行することができます(ただし、写真の保存をjpegに設定しておく必要があります)。
また、コメントなどはつけず、単純に軌跡だけをQGISに移行する場合には、「KMLフォーマット」を使った方が簡単で、わかりやすいと思います。
2023年5月29日現在では、iPhoneやiPadを使ってQGISを持ち歩くことができるようになりました。iPhoneやiPadでは現在位置を表示することができるので、MacのQGISで作成した地図をiPhoneやiPadに表示させ、地図上に現在自分がいる場所を表示することができます。社会地区分析によって作成した地図をQGISを経由してiPhoneやiPadに送ると、社会地図を見ながら街歩きを行うことが可能となります。
QGISとの連携アプリには「QField」を利用します。2023年5月29日現在では、iPhoneやiPadでも利用できるようになりました。初期設定とQGISのプロジェクトをQFieldに表示する方法か下記のリンクなどを参考にしてください。
https://note.com/r_itou/n/n582fcda97b53
<QFieldの使い方>
(1)起動
QFieldを起動すると「QFieldCloudプロジェクト」ボタンが表示されるのでクリックする。
(2)「マイ・プロジェクト」から開きたいプロジェクトをクリックする。
(3)表示したいレイヤの選択
左上の三本線のアイコンがメニューボタンなのでクリックする。保存されているレイヤが見える。薄い文字で表示されているレイヤは表示していないレイヤで、濃いいろで表示されているレイヤが表示されているレイヤである。表示、非表示を変えるためには、レイヤ名を「長押し」し、「地図に表示」のチェックボックスをオンにすると表示される。
左図は、浅川が作成した東京23区の2010年の社会地図(浅川達人『都市を観る』春風社、2022:図表4-26)をQGISを経由してQFieldで表示したもの。社会地図の下には、Open Street Mapを表示している。
左図は、Simple Loggerで記録したゼミの街歩きの軌跡をQGISに取り込んで、QFiledに表示させたもの。街歩きで歩いた地域がどのような社会地区だったのかが、一目でわかる。また現在自分がいる位置が表示されるので、その場所の地域類型を把握することができる。
QGISを用いて小地域統計データから社会地図を作成する方法について、その概略をまとめた資料を作成しました。以下の内容が記されています。
(1)統計データダウンロード
(2)境界データダウンロード
(3)エクセルでの作業
(4)QGISでの作業
以下からダウンロードできますので、ご利用ください。